建築家が家族のために自宅をフルリノベーション!建築家が考えるリノベーションの極意って?
主婦目線で徹底解説します。

最近、デザイン性が高く機能的な住まいを実現するために、建築設計事務所にリノベーション設計を依頼する方が増えています。
設計のプロであり芸術的感性と知性を兼ね備えた建築家が、自分と家族のために手がけた自邸は、自身の価値観や設計思想が反映され、また建築家ならではのアイディアも詰まっています。
リアリエでは今回、中古マンションを購入し自身でリノベーション設計を手がけた、R.E.A.D. & Architects代表で建築家の一級建築士・岡田 一樹さん、インテリアプランニング担当・岡田 絢子さんに、お話を伺いました。物件探しのポイントや設計コンセプト、間取りの工夫、収納計画など、理想の住まい作りの参考にしてみてください。

第5回 内装、施工編 自宅リノベーションを振り返って

構想から順を追って、我が家のリノベーションをご紹介してきた当コラム。
今回はいよいよ内装を決めて、施工、竣工を迎えます。最終回となる今回は、施工中の写真と共に、注意すべきポイントなどもご紹介いたします。

内装の検討のための3ステップ

竣工時の写真(撮影:吉村昌也・Copist)

設計の骨格が固まってきたら、内装の仕上げを決めていきます。リノベーションにおいて、内装は主役。我が家は、次の3ステップを何度も検証して、1つ1つ慎重に決めていきました。
また、仕上げ材を決めた後に内装に合わせて家具を決める方が多いのですが、家全体の統一感を叶えるためには、内装材と同時並行で、置き家具の検討・選定も行うのが良いと思います。
そうすれば、購入前にCGで検討することもできますし、置き家具に合わせて仕上げを変えることも出来ます。

置き家具は、部屋全体を印象付けるいわば建築の一部ですので、素晴らしいリノベーションをしても、置き家具次第では勿体ないことになる場合もあります。

  1. 1.情報収集

    雑誌やネットなどで気に入った内装のインテリア写真などをスクラップしておき、その内装材を調べておきます。
    私達は、天井の無機質なコンクリートとのバランスをとるために、温かい天然の内装材と決めていました。そのため、「〇〇風」といった人工的な素材は使用せず、キッチンや洗面所は、ビアンコ・カララという大理石、ダイニングのアクセントクロスも天然素材の織物にするなど、天然の素材感にはとてもこだわりました。

  2. 2.建材店を巡る

    気になる内装材が見つかったら、取扱店のショールームや施工事例などを見に行きます。私達は足繁く建材店を巡りました。例えば、床材を決める時も1か所の取扱店だけでなく、検討している床材が実際に使われている建物まで足を運び、経年変化の具合や光による色の見え方もチェックして慎重に選びました。

    フローリング店でも写真を撮って比較検討

  3. 3.現場検証とCG検証

    内装材は、単品で良し悪しを判断するのではなく、色や素材感のコーディネーションが良いかどうかで決定していくもの。洋服のコーディネートと同じですね。
    ただ洋服と違う点は、使われる場所が固定されるということです。そのため、検討中の内装材はサンプルを使って現場検証する必要があります。
    素敵な内装材を見つけても、北東向きの我が家で見てみたら、なんだか色が暗く見えたり、一つ一つは素敵なのに家に持ち帰って合わせてみるとなんだかごちゃごちゃしてみえたり…。そんな経験を何度も繰り返しました。

    建材店での合わせチェック 現場でチェック。クロスなどは自然光の当たり方や見る角度でも色味が変わるので実際に使う予定の壁に貼ってみました

いよいよ施工開始!

リノベーションは、ゼロから家を建てる場合とは違い、既存の建物を再利用することが大前提です。そのため解体してみないと分からないことが必ずあります。物件が古かったり、設計図が少ないために現場判断で作ってしまっている物件だったりすると、竣工当時の完成図が正確でない事はよくあること。
リノベーションの設計図が出来上がり、いざ解体工事が始まってみると元の設計図と実寸が全然違ったり、思わぬところに設備配管が通っていたり、施工当時の完成図には載っていない段差が床にあったり。
そのため、予めある程度の誤算を予測しておくことと、予算と期間には修正も加味して少し余裕を持たせておくのが理想的です。

  1. 1.解体

    解体前:奥側の壁がリビングに入る光も風も遮り、暗くて暑いリビングでした 解体後:フルスケルトンに。明るさに驚きました

  2. 2.現況のチェック、墨出し

    私達は当初、天井をコンクリート現しにするつもりで設計図を描いていました。
    事前に同じマンション内の他の物件のリフォーム解体現場を見学した際に、躯体コンクリートがきれいであることも確認済みでした。
    しかし実際に解体し、コンクリート躯体の天井を現してみると思ったより汚い!

    リノベーションは、本当に何が起こるかわからないですね。

    天井を清掃した上で極薄のモルタルで仕上げる方向に急遽変更しました。
    さらに、モルタルは左官職人さんの手仕事によるものなので、事前に工事現場で試験施工と呼ばれる試し塗りを何度も行ってイメージ通りにいくかを検証しました。

    現場でのモルタルの試し塗り

  3. 3.壁下地の施工、設備配管の施工

    壁下地が出来てくると家という実感も湧いてきます

  4. 4.仕上げ施工(床、壁、天井)、並行して造作家具を工場で製作

    フローリング・石などの天然の材料は、色味や模様などのバラツキが大きいので、実際に貼る前に展開検査という仮並べをして、色味の近いものをグループ分けします。
    色味がパッチワークにならないように並べ替える、色味の良くないものは部屋の隅の目立たないところに貼るなどの展開検査を行い、フローリング位置の指定書まで作りました。
    フローリングは、使用面積が大きいので、小さな色味のバラツキが驚くほど全体の印象を変えてしまいます。

    フローリングの仮並べ

  5. 5.造作家具取り付け、水栓取り付け

    キッチンの取り付け

  6. 6.クロス張り、塗装

  7. 7.金物・スイッチなど取り付け

  8. 8.清掃、引き渡し

    竣工時の写真(撮影:吉村昌也・Copist)

    ようやく完成。

建築家やリノベーション会社の役目

現場では工務店さん、電気工事屋さん、クロス職人さんなど様々な人がそれぞれのタイミングで仕事をしてくれています。そして建築家というのは、指揮者と同じ。
自らが書いた設計図をもとに各職人さんへの指示出しや、仕事がきちんと進んでいるかを監督するために足繁く通う人もいます。主人は施工期間中、ほぼ毎日通っていました。
それだけ現場ではなにが起きるかわからないですし、何よりも工事をするのも「人」の手仕事なので、気持ち良い関係を築くことで初めて良い家ができます。

リノベーションを振り返って

皆さんは、リノベーションの意味を覚えていますか?

「改革や刷新を意味し、既存のものを活かし、新たなる価値を創造すること」でしたね。
リノベーションとは、既に築かれてきたその場所特有の環境や生活があった上で、そこに新たな価値をプラスしていくことなのです。

そして家は、生活そのもの。その人の人生そのもの。

その場所で自分達らしく生きていくための“自分自身のリノベーション”でもあります。

リノベーション後、私達の生活は大きく変わりました。
生活がよりシンプルに心地良くなったことで、ライフスタイルまでシンプルで明確になりました。なんだか生きやすくなったような気がします。それは、リノベーションという家づくりを通して自分達を見つめ直し、真っ直ぐに向き合ったから。
最良の家を考えるということは、最良の自分達の未来を考えるということに他なりません。

これからリノベーションをされる方、いつか家づくりをされる方、家づくりを通して自分自身のリノベーションをしてみませんか?

最後まで読んでいただきありがとうございました。

(文:岡田絢子)

岡田絢子岡田絢子
Ayako Okada
建築デザイン事務所 R.E.A.D. & Architects インテリアプランニング担当
二人の幼児を育てる傍ら、建築家である夫・岡田一樹と共に、建築デザイン事務所にて主婦ならではの目線を活かしインテリアプランニングを担当。インテリア関係の執筆も行っている。

岡田一樹
Kazuki Okada
建築デザイン事務所 R.E.A.D. & Architects 代表 / 一級建築士
1984年 兵庫県芦屋市生まれ。2009年 京都工芸繊維大学大学院 工芸科学研究科 建築設計学 修了。2009年~2017年 谷口建築設計研究所勤務を経て、2017年12月 R.E.A.D. & Architects 設立。

建築デザイン事務所 R.E.A.D. & Architects

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