建築家が家族のために自宅をフルリノベーション!建築家が考えるリノベーションの極意って?
主婦目線で徹底解説します。

最近、デザイン性が高く機能的な住まいを実現するために、建築設計事務所にリノベーション設計を依頼する方が増えています。
設計のプロであり芸術的感性と知性を兼ね備えた建築家が、自分と家族のために手がけた自邸は、自身の価値観や設計思想が反映され、また建築家ならではのアイディアも詰まっています。
リアリエでは今回、中古マンションを購入し自身でリノベーション設計を手がけた、R.E.A.D. & Architects代表で建築家の一級建築士・岡田 一樹さん、インテリアプランニング担当・岡田 絢子さんに、お話を伺いました。物件探しのポイントや設計コンセプト、間取りの工夫、収納計画など、理想の住まい作りの参考にしてみてください。

第3回「暮らしやすさと、デザイン性 」
両方叶えるための機能面のプランニング【前編】

建築家に依頼すると、暮らしにくい家になる?

前回では、「どんな家にするか?」という家づくりの方向性の決め方についてお話をしました。家をコンセプトから考えることは、自分達らしい空間性やデザインを実現するために大切なこと。

でも、いくらコンセプチュアルで素敵な空間であっても、暮らしにくければすぐに疲れてしまいますね。
「建築家に依頼すると、お洒落なだけで暮らしにくい家が出来そう。」とよく言われますが、アーティスト思考が強いごく一部の方を除き、建築家とは本来、意匠から機能性、快適性などあらゆる角度の視点をもった職人のようなもの。
私達も、機能面については、多くの時間をかけました。ディテールの細かさもありますが、設計図は実に56枚!一般的なマンションリノベーションでは、設計図は3枚から25枚ほどですので、機能性とデザイン性を両立するために、いかにきめ細かい検討が必要ということがお分りいただけるかと思います。

キッチンのオープン棚

暮らしやすい家にするための機能性のプランニング

コンセプトが決まると同時に、間取りや、部屋数、必要な機能などが自ずとみえてきます。今回は、私達が考える暮らしやすい家にするためのポイントについて、順を追ってご紹介します。

我が家のコンセプトは、「キッチンを中心とした1つの空間に、アートが並び、家族が思い思いに過ごせる美術館のような家」 です。前回ご紹介したヒアリング用のリストから、キッチンも一部とした大きなリビングと、寝室、家族共有の書斎の2LDKという間取りはすぐに決まりました。暮らしやすい家にするためには、ここから、さらに細かいプランニングをする必要があります。

我が家の間取り図

① 機能ごとにゾーニングする

最初に考えることは、ゾーニングです。
家の中で過ごす時間、と一言で言っても人の暮らしは非常に複雑で、1日の中でも様々な種類の時間を過ごしています。身支度を整えたり、食事を楽しんだり、子供と遊んだり、テレビをみながらくつろいだり、家事をしたり、時には1人で読書したり。どの時間もその人にとって必要不可欠な時間。
それらの必要なシーンによって、機能ごとに空間を分ける(若しくは部屋割りをする)のがゾーニングです。

例えば我が家の場合、リビングを必要な4つの機能でゾーニングしました。

キッチン:料理や家事をするゾーン ダイニング:食事や団欒を楽しむゾーン

キッズ:子供が勉強したり、遊んだりするゾーン リラックス:本を読んだり、テレビを見たりして寛ぐゾーン

② 3つの動線を考える

キッチンの奥はパントリー、その奥は玄関へと繋がる

ゾーニングが決まったら、どの場所(部屋)にどのゾーンを設定するかを考えます。その際にプランの基軸となってくるのが、動線です。

家の動線には、家事動線、生活動線、来客動線があります。家事動線とは、家事を担う人が効率よく動く為の移動経路。生活動線とは、他の家族が利用する移動経路。来客動線とは、お客様の為の移動経路です。
3つの動線をなるべく交錯しないように分離することで、狭い経路でのすれ違い、来客からの視線、家事のやりにくさ等生活の様々なストレスを解決することができます。
家事動線は、人によって異なる部分もありますので、扉の開き方(開き戸、引き戸、折れ戸)なども合わせて、設計図を見ながら使用時を想定して再現してみると良いかもしれません。
例えば、我が家のキッチンは、パントリーを挟んで玄関の横です。
キッチンは、言わば主婦のコックピット。美しさも大切ですが、それ以上に機能性を重視したいゾーンですね。
お客様も使う来客動線とは別に、買い物した荷物の運び入れ、ゴミ捨てなど、主婦のための家事動線があると非常に便利です。我が家では、パントリーにドアを2箇所取り付けて、玄関にダイレクトに通り抜け出来るようにしています。

③ ゾーンの主役、置き家具の位置を考える

実際の置き家具

ゾーニングや動線の検討が終わったら、家電や家具を置く位置を考えます。
ソファやダイニングセットなどの大型の置き家具は、ゾーンの中心となるので、CGを使い家具のセレクトや位置の検証も設計と並行して行います。
家具は家が竣工してから考える方も多いのですが、予めインテリア予算を決めておき、この時点で、どの家具をそのまま使い、どんな家具を新たに購入するのか考えておくと、内装や仕上げを家具に合わせられるので、家全体に統一感も出せる上、家具購入で失敗するリスクも避けられます。私達は、この時点からCGを使い、購入候補の家具を描いて、細かい検証を重ねてから家具を購入しました。

検討最終段階のCG

④ 家電の位置を考える 我が家の家電の行方

冷蔵庫、エアコンなど大型の家電や家具は、存在感があり、思いのほか部屋の印象を左右します。それに加え、大型家電の配線を設計図に落とし込むことで、非常にスッキリさせることができるのです。

テレビはリビングゾーンの本棚の中に折れ戸をつけて収納

私は、家電の存在感があまり好きではありません。穏やかな空間作りをするのに、四角い家電たちがどうしても気になってしまうのです。だけど、家電の機能性がない生活も、私にはできない。そこで、目立つ家電は全て隠すことにしました。本来は天井に付けることが多いエアコンから、大きな冷蔵庫などたくさんのキッチン家電、テレビまで全てです。隠すにしても、動線や使い勝手が重要なので、位置や隠し方については細かな検証が必要です。イメージしやすいように、CGを使って検討しました。

広々とした天井にするために、
エアコンは床置きタイプにし換気設備とともにルーバーの中に

正直な話、建築家でもここまで細かい設計をする人は少なく、我が家の設計作業は異常と言われるほど膨大でした。それでも家はその人の暮らしそのものであり、家が完成してから、小さな後悔が積み重なると、暮らしそのものが暗転してしまうのです。

次回は引き続き、両方叶えるための機能面のプランニング【後編】と題して収納計画の立て方などのお話をしていきます。

(文:岡田絢子)

岡田絢子岡田絢子
Ayako Okada
建築デザイン事務所 R.E.A.D. & Architects インテリアプランニング担当
二人の幼児を育てる傍ら、建築家である夫・岡田一樹と共に、建築デザイン事務所にて主婦ならではの目線を活かしインテリアプランニングを担当。インテリア関係の執筆も行っている。

岡田一樹
Kazuki Okada
建築デザイン事務所 R.E.A.D. & Architects 代表 / 一級建築士
1984年 兵庫県芦屋市生まれ。2009年 京都工芸繊維大学大学院 工芸科学研究科 建築設計学 修了。2009年~2017年 谷口建築設計研究所勤務を経て、2017年12月 R.E.A.D. & Architects 設立。

建築デザイン事務所 R.E.A.D. & Architects

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